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「こども誰でも通園制度」とは、どんな制度??
「こども誰でも通園制度」をご存知でしょうか。この制度は、今まで保護者が就労しているなどの理由等、一定の条件を満たしていなければ保育施設に預けられなかった年齢の子ども(0~2歳)を、そうした条件なしに誰でも預けられるようにする制度のことです。今は一部の自治体でモデル事業として行われていますが、2026年度から全自治体を対象に本格的に実施されることが予定されています。
簡単に今の未就学児の預け先についての保育所と幼稚園、そしてこども園の違いについておさらいしてみましょう。保育所は「保育」することが目的なのに対し、幼稚園は「就学前の子供の心身の発達を助長する」ことが目的です。ちなみに、その両方を行っているのがこども園です。それぞれ、その目的にあわせて対象年齢が設けられており、保育所は「保育に欠ける乳児・幼児(施設によって0歳児~対象)」とされている一方で、幼稚園は「3歳~就学前まで」、こども園は「保育に欠ける子も欠けない子も受け入れて教育・保育を一体的に行う」とされています。
そうすると、こども園は今回の「こども誰でも通園制度」に似ているのでは?と思われる方もいるかもしれませんね。しかしながら、こども園も0~2歳は保育を必要とする理由がないと預かり対象にはなりません。(一時保育などで利用可能な場合もあり)
今回の「こども誰でも通園制度」は、今まで0~2歳の子どもを預けるためには就労などの条件が必須だったものが、誰でも通園することが出来る、という新しい制度なのです。
「こども誰でも通園制度」のメリット・デメリット(課題)
0~2歳までの子どもが「誰でも」利用できるこ の制度は、広く柔軟に子育て支援を行うことを主な目的としています。なんだか良さそうなこの制度ですが、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
【メリット】
・子育ての負担を軽くする
対象年齢である0~2歳は、ちょっとお出かけする際にも準備が大変で、持ち物も多くなかなか気軽には外出できない、という方も多いかと思います。つい自宅に引きこもり気味になってしまうこともあるかもしれません。この制度は、小さな子どもがいると今までハードルが高かかった、保護者自身の通院や美容院や友人と会うなどの個人的な用事、兄弟がいる場合には上のお子さんのために時間を使うことが出来るなど、その方の必要に応じて様々な時間の使い方ができます。この制度を利用することの最も大きいメリットは、身体的な負担の軽減はもちろんですが、気持ちの余裕を持てるという、精神的な負担を軽減できることかもしれません。
・子どもの社会性を育てる
通園をすることで、同世代の子ども同士での交流し社会性を育てることが できます。また保育の専門である保育士による指導をうけることが出来るため、子どもの発達を促すことができるということもメリットのひとつです。
・地域社会とのつながり
核家族化がすすむなか、地域とのつながりを持つのが難しく、気楽ないっぽうで保護者が孤独感や孤立感を感じてしまうこともあるかもしれません。この制度を利用することで、近所で同じくらいの年齢の子どもをもつ保護者や先輩ママパパと知り合うきっかけになるなど、地域的なつながりも生まれることも期待できます。
【デメリット】
・保育の質の低下
どうしても初めての通園の際には、保育士一人が一人の子どもにつきっきりでみる必要があったり、慣れるまでは特に手をかけ見ていく必要があったりと、保育士の数が十分である施設であれば問題なくとも、保育士の数に余裕がない場合にはひとりひとりの子どもにかける時間が減ってしまい、トータルとして保育の質が低下してしまう可能性があります。
・感染症のリスクが増加
多くの子どもが集まる場にいれば必然的に感染症にかかるリスクが高まります。これは施設側が対策をしてもなかなか100%は避けられないものなので、ある程度仕方がないと考える必要があるかもしれません。
・費用の負担がある
預かり費用の負担があります。ちなみに利用料金は自治体や施設によってまちまちです。利用料は1時間あたり300円程度の設定が多いようですが、世帯所得によってもっと少ない金額の場合もあります。また給食やおやつなどがある場合には別途費用がかかる場合もあるようです。
・子どもの精神的な負担
当然ながらストレスは子どもも感じるものです。その感じ方は年齢や個人によって差があるものですが、新しい環境に慣れるまではどうしても多少はストレスに感じてしまうかもしれません。場所や人に慣れるまで時間がかかるケースもあるでしょうし、それが保護者にとっても負担になることも考えられます。
【制度の実施における主な課題】
・保育の質の確保
多くの子どもが利用できるのはメリットでもありますが、保育の質を確保するために施設側としては保育士の人材を十分に確保しなくてはいけないですし、0~2歳児の保育に対応できるよう保育環境の整備が求められます。
・費用負担
これは「利用者側」と「自治体側」での費用負担という2つの側面があります。利用料金の適正な設定が難しく、設定料金が高すぎれば制度はあっても利用されなくなってしまうでしょう。自治体側としてはその財政状況によっては制度の維持が難しくなることが考えられます。
・地域格差
地域によって保育施設の整備状況がことなるなど、利用料金に差が生じてしまうことが考えらます。
「こども誰でも通園制度」利用条件や開始時期は
2026年度からの本格実施を目指して、2024年時点では各地域でモデル事業がおこなわれている状態ですから、まだ全国的に統一された基準というものが決まっているわけではありません。
ただ、この制度の目的でもあり最も大きな特徴でもある「保護者の就労の有無に関わらず、一定の時間、子どもを保育園に預けられる」という部分については変わらないでしょう。その他の一人当たりの利用時間制限や利用料金などの詳細な条件については、現在行われている(あるいはこれから行われる)実際の保育の場における試行によって、より具体的になってくるだろう課題や問題点をクリアにしながら、2026年の本格施行にむけて徐々に決まっていくものだと考えられます。